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ますみや復活 : 2003-06-16
昼をややすぎたあたりに用事が済んで、さて、どっかで昼を・・・って段になって、この暑さじゃあ、やはり冷たい蕎麦でも、ってえとこですが、歩きで来てるんで、あんまし遠くまで行く、ってのもなあ。というところで、さくら祭の間、休んでいた「ますみや」ってえ蕎麦屋が近かったなあ、と思い出し、どれ、相変わらず休んだままなのかどうか確かめに行ってみるとするか。

さよう、蕎麦のためだったら多少の労苦はいとわない、ってえ「美点(かあ?)」がございますので、ゆっくりとキャッスル・ホテル裏手のゆるやかな坂を上がって行きますってえと、ん?遥か前方にあるうちから、ワタクシの「野性のカン(別名「喰い意地」)」がピクピクと騒ぎ始め、おお!近付いてみればその前には出前用のスーパー・カブ(かな?)が止まっているし、入り口には久しぶりの「暖簾」が風に揺れておりますよ!なんてこったい!「復活」したんだ!
いやあ良かったです。なんだかひと月ほど休んでたみたいですが、もーヤメちゃうんじゃないか?とシンパイしてたんですよ。

ま、時分どきを外してることもあってか、他にお客さんはいませんでした。さっそく「もり2枚」を注文でございます。厨房には女性ひとりがおられまして、すぐ火力を上げ、茹での態勢に入った様子。垣間見える厨房の奥では大釜が湯気を立てております。そこに蕎麦を振り入れ、サっと回して頃合を見る。次いで大きなザルで茹で上がった蕎麦を掬い上げ流水で粗熱をとって「氷水」に放ち、キュっとシメる!ふむふむ、手慣れた仕事を要領よくこなしていってますねえ。過剰な思い入れや、これ見よがしのスタンド・プレイも無い。当然の手順を過不足なくおさえてゆく当たり前の「良さ」が活きていますねえ。
いえね、先日も中央線沿線の蕎麦店などで、いささか頭デッカチな、いわば意識過剰とも思える蕎麦店主の立居振舞いに、やや辟易してきた身としては、このような普通さ、が実に清々しく思えるのですよ。

もちろん、そんな店主たちの中でも、一部の「硬派」は、旧来の「普通の」蕎麦屋に飽き足らない「想い」があったればこそ、業界外から非常な苦労を経て参入して来ているのだと思うんですよね。それだけに理想も高く、ついでにお値段も高くなってしまう、と。
どこまでも高い基準を追求していくと、最後には、季節も限定の営業にまで行きつくのではないか、と思うのですが、さて、そこまで追求したところで、その違いをカンゼンに理解してくれる「客」の方はいるのでしょうか?そして、いくら高くなっても良いから、とそこまで要求する客が?
おそらく、すべての理想を追い求めて行ったとしたら、西荻窪の某店のあっさり盛りの「もりそば」 900円どころじゃない、おそらく一枚で 4,500円ほどにもなってしまうのではないでしょうか?もり2枚!なんて威勢よく注文も出来ませんなあ。

一方、そこそこの蕎麦粉を仕入れ、水まわしにだって、普通に水道の水を使い、コネは手でやるものの、「打ち」と「切り揃え」は機械を使う。茹でる釜に張るのも水道の水だし、ダシをとるための節(ふし)を煮込むのだって、当然おんなじ。その節も価格との兼ねあいで業者から普通のものを仕入れ、醤油や味醂、砂糖にしたところで、ごく一般的なものを使って「かえし」を作る。さあ、ではそうやって作ったものは「美味しくないか?」
まあ、もちろん、もっと美味くすることは出来るでしょう。コストのコトさえ考えなければね。
水だって湧き水を汲んで来るようにして、あるいはイオン分解やら酸化還元、コーラル・サンドを通して竹炭で処理をして、もちろん蕎麦だって産地、いえいえ、生産者まで限定して、殻を割るにも気を遣い、ゆっくりと熱を持たせないように石臼で挽いて、体力的に可能なだけの量をその日の分だけ打ち、かえしなら、醤油も味醂も産地、そしてメーカーを限定し、ダシなら、どこそこの本枯れ節に限定する・・・これらのファクターをひとつづつ採り入れて行けば、味は向上していくハズです。常識的には、ね。

でも、材料が良ければ美味しいモノが出来るってえワケじゃありません。どんなに良い・高価な材料を使っていたとしても、味を調える、ってのは、それとまったく別な次元のことなのです。
そこで大事なのは「能書」ではなく、出来上がったものが「旨い」かどうか?なのです。
確かにヒドい材料を使っても、それなりに「喰える」ものは作れるでしょう。逆に、どんなに高価な材料を使っても「喰う」に耐えないヒドい味にすることも出来ます。そして、その「あわい」に、求められる味に見あった材料を使って「美味」の世界を追求する。それこそが「スジの通ったこと」だと思うんですよ。
たかが「もりそば」一枚に 1,000円いただかなきゃ「やってけない」よな材料を使う、ってのはもう既に「スジが通らないこと」でしょう。もちろん、高い材料をいくら使ってみたところで、それぞれの好みってものがありますから、例えば「う〜ん、あたしゃあ、ツユがもう少し甘めのほうがいいなあ」みたいな悔しさは、高けりゃ高いほど「重く」なるワケで。

さて、本題の「ますみや」の蕎麦。きちんと茹でて、きっちりシメて、キモチ良い仕上がりになっています。ほのかな蕎麦の香りと、それを損なわない程度にダシを利かせた、やや浅めのツユ。浅い、とは言っても、決して力の無い浅さではなく、蕎麦をどっぷり漬けてから引き上げて食しても、蕎麦の香りが残る程度の追い込みにしてある、という感じです。そのあたりの加減がまた、嵩に掛かってなくて良いのですよ。

もり一枚 400円。二枚頼んでも西荻窪の某店の「あっさり盛り」一枚より安い!天庵なきあと、もり二枚!と気楽に頼める弘前市内の蕎麦屋さんは、この「ますみや」が富田の「一力」と並んで最右翼かもしれません。

ますみや 弘前市元寺町 56-2/Tel 0172-34-0002
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by skyhigh-corp | 2003-06-16 23:14

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