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REPLAY : 2003-06-20
新聞報道によると、'80年代の終り近く、「リプレイ」(原題: "Replay"、1986年に発表され、日本では、1990年に発売されています)で、1988年の第14回世界幻想文学大賞を受賞したアメリカの作家、ケネス・グリムウッド(「リプレイ」の作者名としては、ケン・グリムウッドとクレジットされています)が、この6月5日に、サンタバーバラの自宅で死亡していたそうです。死因は「リプレイ」を思わせる心臓発作だとか。

リプレイは、1976年の「Breakthrough」、1979年の「Elise」、1982年の「The Voice Outside」に続く作品で、前述の世界幻想文学大賞の他にも、ローカス賞の「SF novel」部門の候補にもなっていました(受賞作品はディヴィッド・ブリンの「知性化戦争」The Uplift War/ David Brin)。その後は、1995年の「Into the Deep」(邦題「ディープ・ブルー」)が有名です。

フダン滅多に「SF」は買わないのですが、なにを思ったか、この「リプレイ」、ついつい買ってきてしまった文庫本でしたが、いざ読んでみたら、これが実に「いい」んですねえ。
たとえば推理ものだったら、ギルバート・キース・チェスタトンの「ブラウン神父」シリーズ以外は、もいちど読みたい、なんて思うことは殆ど無いんですが、まして(まして?)SFともなれば、いちど読んじゃったら「もう充分」ってなもんだったのでございます。
しかし、このリプレイだけは違いました。ま、イタロ・カルヴィーノほどではないにしても、フと「また読もうかな?」ってえ気になるんですよ。
さて、じゃあ、いったいどんなお話なの?ってえと、[ケン・グリムウッド リプレイ]で YAHOOあたりで検索をかけてみてください。イヤになるほど出てきますよ。でも、そんなインプレッションなんか読まないで、いきなり読んだほうがいいです。だって、どれも、ヘンにアラスジみたいの語っちゃってるんですが、なんだか読みたくなるよな紹介になってないのが多くて。やはり、偶然出会って受ける衝撃、ってのが楽しいんですが、ちょーどその正反対に誘導してってるよな気がします。
また、その語りクチに魅力が無いんですよ。ま、紹介しておられる方々は「作家」じゃないんで、文学的才能を期待するほーが間違ってるんでしょうけど。

ま、それはともかく、どーゆーワケか(?)今泉伸二「リプレイJ」とかゆうコミックの原作にもなっています。そっちのほうはチラっと見ただけですが、原作とは「似て非なるもの」。はっきり言って「バカバカしい」出来でございます。(あ、ワタシがコミックすべてをバカにしてる、とは思わないでねん。質の悪いものをバカにしてるだけざんす)

同じ新聞には、最近、日本人の3人に1人は「まったく」本を読まないよーになってる、ってえ記事が出てました(雑誌とコミックは除外ね)。でしょうなあ。今の世の中、いろんなエンターテインメントが揃ってて、楽しみもいろいろありますから、本も映画も一部のヒットを除けば、マチガイ無く「マーケットは狭まって」るよーです。

映画と違って、本の場合、ただエンターテインメントとしてだけの存在ではなく、「アレクサンドリアでの喪失」を持ち出すまでもなく、「知」の集大成であるワケです。(映画でも、記録映画、学術映画というものは存在しますが、それらは本に代表される「概念」などの補強のためのものではあり得ても、それ自体が重要な「知」の中心として存在できるようなものではない)
断片的な、あるいは個人的スケールでの「知」なら、インターネット上で膨大な量が流通しています。
しかしながら、それらも体系的な、かつ求心的なコンストラクションとしての「知」とはなり得ていません。確かに学術論文などでは、記述に引用を含む場合はリンク・スイッチでそちらの資料にジャンプ出来るなど、その面ではインターネットは有利なのですが、まだ今のところ、記述が「浅い」ので、上っ面の情報だけで終ってしまうんですね。

PDAに小説などをダウンロードして楽しむ「電子ブック」の配信も始まっていますが、そうなると、ますますスケール・メリットから一部のメジャー・ヒットに偏って行くんでしょうなあ。
いつの時代でも、どのジャンルでも、メジャーのみを追求し、マイノリティを軽視する「あきんど」の姿勢は「文化」を薄くして行きます。そこに「これは文化事業でもある」という視点を失わずに目を配る良心的な業者も「皆無ではない」ことを信じていたいものです。
もしかすると、そこにこそネットを利用した、マイノリティを活かす別なチャンネルが生まれる、ってえ可能性もありますが、なにはともあれ、そこのああた、最近、本なにか読みましたか?
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by skyhigh-corp | 2003-06-20 23:19

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